名古屋高等裁判所 昭和40年(ネ)563号 判決 1967年2月27日
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は「原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。被控訴人の反訴請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文と同旨の判決を求めた。
当事者双方の事実上の陳述、立証関係は、次に付加訂正するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
控訴代理人は、被控訴人主張の取得時効の原因たる占有の始期の昭和五年七月一九日というのは家督相続のときに過ぎず事実的支配とは無関係で、客観的な事実がないし、訴外渡辺某が建築したのは本件AB線(原判決添付図面)を南に越えていないから係争地の占有には関係ない事実である。本件付近一帯の土地は、名古屋市中村区土地区画整理組合の区画整理事業の対象とされたものであつて、整理確定図が昭和一九年頃交付され、所有土地の決定したのは昭和二三年五月のことであり、今日の土地を問題とする限り土地所有の意思は右昭和二三年五月以降でしか生じ得ないというべく、事実支配も右組合から控訴人に移転されたとみるべく、被控訴人の主張は誤りである。また、建物所有者たる福田源次郎は建物の賃貸人に土地までも代理占有せしめる意思はなかつたのである。
なお、訴外加藤専蔵が控訴人より土地を借りた当時(昭和二二年頃)にはトタン塀はなく板切れによるそまつなものであつて、トタン塀は昭和三〇年頃である。と述べた。
被控訴代理人は、右主張を否認した。
証拠(省略)
理由
当裁判所の判断は次に付加訂正するほかは、原判決理由記載(ただし、理由二反訴の判断中(1)の六行目の「同人は右地上に建物を建築所有していたこと、」を「同人は右地上に別紙図面A´B´線より約一尺近くも屋根部分(妻)が張出している建物を昭和五年以前に建築所有していたこと」と訂正する。)のとおりであるから、右原判決の記載を引用する。
当審における証人加藤一朗、山森玲子、小島かつの証言、控訴本人の供述中右認定に反する部分は採用できず、他に右判断を左右するに足りる信用すべき証拠はない。
控訴代理人の当審において強調する占有関係の論点中区画整理事業との関係について述べるところは、本件の証拠関係からいうと適切ではない、すなわち本件においては昭和二三年五月の土地区画整理による本件両土地の登記がなされたことは甲第一、二号証により認められるものの、整理確定図の提出はなく、もともと区画整理そのものは占有状態を当然変更するものではないから、特に反証のない限り被控訴人主張の取得時効の起算点がその時点で始まり、あるいは中断されるという論は採用できず、その余は、前記認定と異なる事実関係を前提とするものであるから排斥を免れない。
よつて、原判決を相当として、本件控訴を棄却すべく、民事訴訟法第八九条を適用し、主文のとおり判決する。